『01』Spotlight kid
『01』Spotlight kid
NueroSocietiaのWatabe Shinya氏による秋葉原系なポップスを制作するユニット。
といっても普通のJ-POPと変わらない。むしろ上質。
音色の選択やミックスの処理が心地よく、本業のサウンドクリエイターとしての実力も垣間見える。
あえて違いを挙げるなら、歌詞がストーリーを持つこと。詞先の制作アプローチが物語性を増幅して、アルバム全体としての軸を据えることにも効いている。
以下、全曲解説。
1曲目「青く、果てなく」
サイケデリックトランスに、爽やかなピアノと哀愁あるメロディを載せた名曲。ボーカルはI’veで有名なSHIHO。
転調使いがハンパなく、特に間奏後のDメロから大サビまでが格好良すぎる。メロディとの絡みも絶妙。転調で感動して泣いたのはこの曲が初めて。
私のiTunesライブラリのうち、最も再生回数の多い曲。控えめに言って、最高。
2曲目「カレイド」
夜の首都高速。かっこいい。
3曲目「虹の生まれる街」
80年代アイドルソングを思わせるアレンジに、現代的な歌詞を載せた、ターゲット層ドンピシャなポップス。
ボーカルはMOMO。声質と曲がここまで合っているのも珍しいのではないか。
4曲目「Close to you」
アコギ1本で作曲したという勢いのあるロックに、片霧烈火と霜月はるかというよく合う声質を持つ2人のツインボーカル。この曲で、I'veボーカルだけのある意味での単調さから脱却する。
個人的には、ボーカルの件にとどまらず、楽曲としても本アルバム内でも異色の楽曲であるように思う。これまでの3曲が風景描写に重点を置いていたのに対し、4曲目で突然、人の内面に踏み込むからだ。ここで一気にメッセージ性を帯びることになる。
5曲目「Phallusの悲鳴/母の歌」
完璧なロックバラード。
1曲目で孤独を表現し、ストーリーを辿ってきたが、ラストの5曲目で母に帰る。アルバム通して、人生まるごと辿っていることがここで見いだせる。
ボーカルのAngelの力強さが物語をしっかりとまとめあげる。
6曲目
ボーナストラック1曲目。サイケデリックトランスの中でもインドから中東にかけての骨太なアレンジ。原曲の跡形もないが、見事なアレンジ
7曲目
ボーナストラック2曲目。打って変わって、深海に漂うテクノアレンジ。
ゲーム音楽家細井聡司のセンスが心地よく光る。
彼らが本作品と同時期に共同制作した『tekNOTO』も素晴らしい作品。
August 31st, 2020